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研究室紹介

研究内容


筋収縮装置の自励振動現象(SPOC)

 筋肉は、収縮(力発生)状態か弛緩状態かのいずれかの状態をとるといわれている。ところが、これら2状態の中間に自励振動状態があることを発見し、これを SPOC (SPontaneous Oscillatory Contraction) と名付けた。SPOC は、両端を固定した筋収縮系(細胞膜のない収縮装置だけからなるモデル筋系)をカルシウムイオン除去、ATP添加の生理的イオン環境(弛緩条件)下に、比較的高濃度の ADPと無機リン酸(Pi)を加えることによって生じる。図に見られるように、骨格筋の収縮構造単位である筋節が、自発的に収縮と伸張を繰り返す。典型的な SPOC の場合には、筋節長の振動周期はほぼ一定で数秒、振動波形は、ゆっくりとした収縮相と素早い伸長相からなる鋸歯波形を示す。この波は長距離にわたって伝播することが多い。
 SPOC の生理的な意味は、その機能が一過的な収縮にある骨格筋においては明らかでない。しかし、振動そのものが生理的機能である心筋においては、何がしかの生理的意味を持っている可能性がある。しかも、心臓の筋線維の SPOC 条件は骨格筋と比べて生理的条件に近い。

【図】SPOC 中の骨格筋筋原線維の連続顕微鏡写真。太く黒い部分がA帯(ミオシンフィラメント)。各筋節がゆっくりとした収縮と素早い伸長を繰り返す。
Ishiwata & Yasuda (1993), Yasuda et. al. (1996), Fujita & Ishiwata (1998), 石渡 (1998)

分子モーター1分子の結合破断力の測定

 生物の運動は、分子モーターと呼ばれるタンパク質が、それと対をなすタンパク質のレールの上を滑り運動することにより生じる。しかしモーター分子の動作機構は未だ実験的に解かれておらず、生物物理学における重要な課題の1つとされている。石渡研究室は、慶應義塾大学物理学科木下一彦研究室と共同で、筋肉の分子モーターであるミオシン(機能部位 20nm)と、アクチンフィラメント(太さ 8nm、長さ 数〜10um)との間の相互作用を分子レベルで調べてきた。そして光ピンセット(赤外レーザー光により、ミクロンサイズの粒子を非接触で捕捉する方法)を用いて、この2つの間に働く結合力を分子1個のレベルで直接測定することに成功した。結合力は 10pN (10億分の1グラム重)で、分子モーターの発生する滑り力の数倍程度であった。この値から解離のエネルギー障壁の変化を見積もり、2つのタンパク質間の結合状態について新しい考察を展開した。
 今回開発された新しい実験技術は、分子モーターの研究にきわめて有効であるが、それだけでなく、顕微操作技術を必要とする他の多くの分野に広く応用されるものと期待している。

【図:Nature (1995) より引用】アクチンフィラメントとミオシン分子の間の硬直結合破断力測定の連続蛍光顕微鏡写真。a:蛍光標識したアクチンフィラメントの後端に直径1ミクロンのビーズ(黒矢印)を付け、光ピンセットにより捕捉し一定速度で動かした(白矢印方向)。アクチンフィラメントには2つのミオシンが結合している。b、c:レーザーの捕捉中心が動くにつれてビーズは引っ張られ、やがてミオシンとの結合が破断する。d、e、:同じミオシンに再結合させ別の方向に引っ張ることも出来る。スケール:5ミクロン。
Nishizaka et. al. (1995), 西坂 & 石渡 (1996)

アクチンフィラメントの解体と再構築

 石渡研究室では、長年、「筋収縮(生体運動)系の構造と機能の解体・再構築」を研究テーマとしている。心臓の筋線維中にあるアクチンフィラメント(アクチン分子の繊維状重合体でありタンパク質分子モーターであるミオシン分子と相互作用することで運動する)を、一部分を残して選択的に取り除くことにより、筋線維の収縮機能を完全に失わせた。このアクチンフィラメントの除去には、血漿中に存在するゲルゾリンと呼ばれるアクチンフィラメント切断タンパク質を作用させた。この筋線維に、適当な条件下で精製アクチン分子を導入することによって、ほとんど完全な形でアクチンフィラメントを再重合・再構築することに成功した。アクチンフィラメントを除去した筋線維には、幸い特定の場所にアクチンフィラメントの一部分が断片として残っていた。この部分を重合核として利用できたことがこの成功の主な要因である。
 こうして、アクチンフィラメントを再構築した筋線維は収縮機能を回復し、しかも、精製した制御タンパク質を添加することによって収縮・弛緩の調節機能も回復した。これ自体驚くべきことだが、さらに驚いたことに、再構築筋線維の発生する張力は平均で元のものの1.4倍にも達した。再構築筋線維中のアクチンフィラメントは元の物よりも長くなっていた。こうして、筋収縮装置のような高次構造も、タンパク質重合体と同様に、タンパク質自身が持つ自己集合能を利用することで人工的に再構築できることが示された。

【図:Biophys. J. (1996) より引用】アクチンフィラメントだけに選択的に結合する蛍光物質によって、心筋収縮装置(横紋構造がある:ウシ心筋から調製)中のアクチンフィラメントだけを観察した蛍光顕微鏡写真。蛍光強度の強い所ほど、疑似カラー表示によって赤くしてある。上、天然のもの:中、ゲルゾリン処理によって断片を残してアクチンフィラメントを除去したもの:下、精製アクチン分子によってアクチンフィラメントを再構築したもの。ほとんど元通りになっていることがわかる。スケール:2ミクロン。
Fujita et. al. (1996), Funatsu et. al. (1994)

光ピンセット顕微鏡


エバネッセント顕微鏡


筋肉の張力測定

所在地

住所(実験室)

〒169-8555 東京都新宿区大久保3−4−1
早稲田大学理工学部物理学科
62E号館1階103室

住所(オフィス)

〒169-8555 東京都新宿区大久保3−4−1
シルマンホール3F 石渡研究室
直通電話 03−5286−3437
FAX 03−5286−3437
内線電話 73−3652

地図(PDF109KB)


場所 内容 所属 内線
62E-101 実験室(一分子計測等) ハイテクリサーチセンター 6267
62E-103 生化学室、居室 ハイテクリサーチセンター 3652
51-701A 細胞実験室 理工学部 5703
55S-409B バイオ・ナノマシン助成研究室 理工総研 6861
66-310 オフィス(居室) 生命理工学専攻 6635




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